民法改正

6 平成23年改正からみる法改正の構造〜「民法等の一部を改正する法律」の附則〜

6 平成23年改正からみる法改正の構造 附則には、 施行期日や経過措置規定がおかれます。 ざっくりと、 民法等の一部を改正する法律の附則を見てみましょう。 附則 (施行期日) 第一条この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において 政令…

5 平成23年改正からみる法改正の構造〜条の繰り下げ、繰り上げを避けるために〜

5 条の繰り下げ、繰り上げを避けるために 民法は、 その条がとても多いですから、 新しい条を追加したり、 既存の条を削除する度に、 前後の条番号が動いてしまうのでは大変です。 そこでどうするのかというと、 繰り下げを避けるために枝番号を使い、 繰り…

4 平成23年改正からみる法改正の構造〜「民法等の一部を改正する法律」の本則〜

年度末ばったばたです。 今年の年度末は、金融機関さんが頑張っています。 ある金融機関では、“異常なほど”仕事が 集まってきているようです。 当然登記にもしわ寄せがきています。 今日設定の抵当権。 「書類揃いました〜きてください!」 と連絡があったの…

3 平成23年改正からみる法改正の構造〜「民法等の一部を改正する法律」の骨格〜

3 「民法等の一部を改正する法律」の骨格 「民法等の一部を改正する法律」を実際に見てみましょう。 骨格だけをまずは確認します↓ 民法等の一部を改正する法律 (民法の一部改正) 第一条民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。 …

2 平成23年改正からみる法改正の構造〜溶込み方式〜

2 溶込み方式 「民法等の一部を改正する法律」は、 「民法」という法律を改正するために作られましたが、 これはこれでひとつの立派な“法律”です。 平成23年法律第61号、 という独自の法令番号も振られています。 一部改正法も、通常の法律同様、 「本…

1 平成23年改正からみる法改正の構造〜全部改正・一部改正〜

1 全部改正・一部改正 「法改正」と一口にいっても、 法改正には「全部改正」「一部改正」があります。 「全部改正」は、 既にある法律を全面改正した法律に、 そっくりそのまま置き換えてしまうというものなので、 あまり理解に苦しむところはありません。…

34 民法改正・基本の「ほ」 〜詐欺 96条 (2)第三者保護規定〜

34 詐欺 96条 (2)第三者保護規定 現行の詐欺取消しに関する 第三者保護規定は以下の通りですが、 (詐欺又は強迫) 第九十六条 3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。 第三者が保護される場合…

33 民法改正・基本の「ほ」 〜詐欺 96条 (1)第三者による詐欺〜

33 詐欺 96条 (1)第三者による詐欺 現行の第三者による詐欺 に関する規定は以下の通りですが、 (詐欺又は強迫) 第九十六条 2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、 相手方がその事実を知っていたときに限り、その…

32 民法改正・基本の「ほ」 〜錯誤 第95条ただし書 (5)第三者保護規定〜

32 錯誤 第95条ただし書 (5)第三者保護規定 錯誤の規定には、 「通謀虚偽表示」や 「詐欺・強迫」の規定に用意されている 第三者保護規定がありません。 そこで、 錯誤の規定にも、 第三者保護規定を設ける方向でほぼ固まっています。 錯誤の意思表示…

31 民法改正・基本の「ほ」 〜錯誤 第95条ただし書 (4)錯誤の効果〜

31 錯誤 第95条ただし書 (4)錯誤の効果 錯誤による意思表示の効果を、 現在の「無効」として維持するか、 それとも、「取り消すことができる」に改めるか、 現在も議論は続いているようです。 そもそも、 なぜこのような議論が湧いて出たのかといえば…

30 民法改正・基本の「ほ」 〜錯誤 第95条ただし書 (3)ただし書の例外〜

30 錯誤 第95条ただし書 (3)ただし書の例外 現行の95条は以下のとおりです。 (錯誤) 第九十五条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。 ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張するこ…

29 民法改正・基本の「ほ」 〜錯誤 第95条 (2)要素の錯誤の明確化〜

29 錯誤 第95条 (2)要素の錯誤の明確化 現行の95条本文は以下のとおりです。 (錯誤) 第九十五条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。 この条文を読んだとき、 一体どのような場合が「要素に錯誤があ」ると いえるのか…

28 民法改正・基本の「ほ」 〜錯誤 第95条(1) 動機の錯誤に関する判例法理の明文化〜

28 錯誤 第95条(1) 動機の錯誤に関する判例法理の明文化 錯誤をめぐる紛争の多くは 動機の錯誤が問題となるものであるにもかかわらず、 動機の錯誤に関する現在の規律は 条文上分かりにくい (というか、動機は意思表示の要素ではないから、 判例・通…

27 民法改正・基本の「ほ」 〜通謀虚偽表示 第94条 (2)類推適用法理の明文化〜

27 通謀虚偽表示 第94条 (2)類推適用法理の明文化 判例による94条第2項の類推適用法理を 条文上明記すべきであるとの考え方があります。 そもそも、 どんな場面で判例が類推適用を許容するのか? という前提をひとつ確認しておきましょうか。 たと…

26 民法改正・基本の「ほ」 〜通謀虚偽表示 第94条 (1)第三者保護規定〜

26 通謀虚偽表示 第94条 (1)第三者保護規定 現行94条第2項は、 「善意の第三者」を保護しますが、 第三者が保護されるための主観要件としては、 現行94条の文字通り、 第三者が「善意」であれば足りるとする案(甲案)と、 第三者が「善意無過失…

25 民法改正・基本の「ほ」 〜心裡留保 第93条 (3)第三者保護規定〜

25 心裡留保 第93条 (3)第三者保護規定 心裡留保の規定には、 「通謀虚偽表示」や 「詐欺・強迫」の規定に用意されている 第三者保護規定がありません。 そこで、 心裡留保の規定にも、 第三者保護規定を設ける方向で議論が進んでいます。 心裡留保の…

24 民法改正・基本の「ほ」 〜心裡留保 第93条 (2)無効要件〜

24 心裡留保 第93条 (2)無効要件 前回の記事で、 ただし書きにある悪意等の対象(「表意者の真意」の部分)を 書き改める方向で話が進んでいる旨説明しましたが、 心裡留保の意思表示が無効となる要件については さらに3つの考え方がぶつかり合い、 …

23 民法改正・基本の「ほ」 〜心裡留保 第93条 (1)無効要件〜

23 心裡留保 第93条 (1)無効要件 心裡留保は試験に良く出題されますが、 良く出題がなされているということは、 実務でも良く問題となる事項である、 あるいは、 法的思考の基礎である、 基礎的な法律知識である、 ということが出来ます。 そのような…

22 民法改正・基本の「ほ」 〜「意思能力」の定義〜

22 「意思能力」の定義 意思能力を欠く状態で行われた法律行為の効力が 否定されるべきことには判例・学説上異論ありません。 しかし、 民法はその旨を明らかにする規定を設けていません。 そこで、 意思能力を欠く状態で行われた 法律行為の効力について…

4 条文から見る23年改正のポイント 未成年後見人が複数ある場合の権限の行使等

4 未成年後見人が複数ある場合の権限の行使等 未成年後見人が複数ある場合が予定されたことに伴い、 未成年後見人が複数ある場合の権限の行使等に関して、 次の規定が新設されました。 (未成年後見人が複数ある場合の権限の行使等) 第857条の2 未成年…

3 条文から見る23年改正のポイント 未成年後見人

3 未成年後見人 改正前は、以下の条文がありました。 (未成年後見人の数) 第842条 未成年後見人は、一人でなければならない。 これにより、未成年後見人は一人でなればならず、 また、法人を未成年後見人に選任することはできない と解されていました…

2 条文から見る23年改正のポイント 15歳未満の者を養子とする縁組

2 15歳未満の者を養子とする縁組 15歳未満の者を養子とする縁組については 改正前民法第797条は以下のように規定していました。 (十五歳未満の者を養子とする縁組) 第七百九十七条 養子となる者が十五歳未満であるときは、 その法定代理人が、これ…

1 条文から見る23年改正のポイント  親権停止制度

1 親権停止制度 昨年(平成23年)の5月27日に法律第61号として、 民法等の一部を改正する法律が成立し、 本年(平成24年)の4月1日に施行されることになっています。 (公布⇒平成23年6月3日) 児童虐待への対応のひとつとして、 「親権」制…

21 民法改正・基本の「ほ」 〜強行規定と任意規定の区別の明記〜

強行規定と任意規定の区別の明記 第10回会議の審議で、 民法の規定を個別に検討して「強行規定か任意規定かの区別を 条文上明らかにすべきである!」との意見がありました。 確かに、 強行規定か任意規定かの 判断に悩む場面は思いの他多く、 すべの条文に…

20 民法改正・基本の「ほ」 〜任意規定と異なる意思表示 第91条〜

任意規定と異なる意思表示 第91条 現行民法は91条で、 任意規定に反する内容の意思表示は、 その意思表示通りの効力があることを定めています。 (任意規定と異なる意思表示) 第九十一条 法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と 異なる意…

19 民法改正・基本の「ほ」 〜具体的検討の前に。記事を書く際の基本ルール〜

記事を書く際の基本ルール さて、ここまでは、 改正の経緯や改正作業が どのような感じで進められているのかを 中心にみてきたわけですが、 次号からは、 いよいよ具体的にどのような改正作業が 進められているのかその中身を 見ていくことにします。 その前…

18 民法改正・基本の「ほ」 〜民法典の編纂方式の抜本的見直し〜

民法典の編纂方式の抜本的見直し 今回の債権法改正作業では、 民法典の編纂方式の抜本的見直しも 提案されています。 「パンデクテン方式」をぶち壊して 一般の人にとって親しみやすい編纂に 変える、というのがその趣旨のようです。 具体的には、 総則の「…

17 民法改正・基本の「ほ」 〜改正に続く改正がある〜

改正に続く改正がある 今回の改正の対象は、 民法の「債権関係の規定」のうち、 「契約に関する規定を中心に」 とされています。 「債権関係の規定」とされていますから、 債権に関係の深い分野である 第1編総則の (第5章)法律行為 (第6章)期間の計算…

16 民法改正・基本の「ほ」 〜学者主導の改正作業?〜

学者主導の改正作業? 今回の債権法改正において事実上 土台となっているのが 民法(債権法)改正検討委員会の案です。 民法(債権法)改正検討委員会は、 わが国を代表する学者を中心に組織された (建前としては)“私的団体”ですが、 改正の基本方針を作成…

15 民法改正・基本の「ほ」 〜平成16年改正の経緯〜

平成16年改正の経緯 平成16年3月19日、 政府は「規制改革・民間開放3か年計画」を閣議決定します。 この政策のひとつとして 「⑰民法の平仮名・口語化を含めた財産法制の抜本的見直し(法務省)」 が設けられ、 16年改正がなされるわけです。 ただ…