1 条文から見る23年改正のポイント  親権停止制度


1 親権停止制度





昨年(平成23年)の5月27日に法律第61号として、
民法等の一部を改正する法律が成立し、
本年(平成24年)の4月1日に施行されることになっています。
(公布⇒平成23年6月3日)




児童虐待への対応のひとつとして、
「親権」制度についての見直しが行われたものです。




この平成23年改正のポイントを、
司法書士試験と関係があると思われる範囲で)
条文から読み取っていきたいと思います。




まずは何といっても、
2年以内の期間に限って親権を行うことができないようにする
親権停止の制度が創設されたこと
を取り上げましょう。





親権の制限をより適切に行うことができるようにするため、
従来の「喪失」の制度(民法834条)に加えて創設されたものです。
新設された親権停止制度の条文は以下のとおりです。







(親権停止の審判)
834条の2 父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより
      子の利益を害するときは、家庭裁判所は、、その親族、未成年後見人、
      未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、
      親権停止の審判をすることができる。
    2  家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに
      要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、
      2年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。





ポイントは以下のとおりです。




「子」本人が親権停止を請求することが出来ること。




これは834条(親権喪失の審判)、
835条(管理権喪失の審判)においても同様です。



当事者である「子」に請求権を付与するのが
相当であることから請求権者に含められました。




なお、改正前は喪失の審判を請求することが出来る者は
「子の親族」と「検察官」に限られていました。




年齢の制限は特にないので、意思能力さえあれば請求することができます。

















「2年を超えない範囲内で」親権を停止する期間が定められること。




つまり、一律「2年」として停止するのではなく、
事案に適した期間を設定できるようにしました。
「停止」の場合、「喪失」の場合と違って、
停止期間が経過すれば親権は回復します。




















なお、
ややこまかい話ですが、
親権「喪失」の審判の請求があったのに対し、
家庭裁判所は親権「停止」の審判をすることが出来るようです。
前者は後者の請求を包含する関係にあると考えられるからです。




たとえば「喪失」と「停止」の要件の一部を比較すると、




「喪失」の要件⇒「父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であること」
「停止」の要件⇒「父又は母による親権の行使が   困難又は不適当であること」
とあります。




程度の違いが要件の違いであり、
前者は後者を包含することがわかります。




「著しく」という文言が「喪失」と「停止」のケースを分ける
という点は、重要なポイントとなります。






坂本龍治