29 民法改正・基本の「ほ」 〜錯誤 第95条 (2)要素の錯誤の明確化〜

29 錯誤 第95条 (2)要素の錯誤の明確化




現行の95条本文は以下のとおりです。






(錯誤)
第九十五条  意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。







この条文を読んだとき、
一体どのような場合が「要素に錯誤があ」ると
いえるのかが、良く分かりません。





この点
判例は「要素」について、





意思表示の内容の主要な部分であり、
この点についての錯誤がなかったなら
表意者は意思表示をしなかったであろうし、
かつ、
意思表示をしないことが
一般取引の通念に照らして正当と認められること




を意味するとしています。
つまり、主観的因果性と客観的重要性の
2つを満たす必要があるとしています。





今回の改正では
この判例法理を明文化する方向で、
ほぼ固まっています。





ちなみにですが、
せっかくなので、理解を深めておきましょう!



なぜ、
主観的因果性と客観的重要性の2つを満たす必要があるか?




主観的因果性が要求される理由は、
95条が表意者保護の規定であることにあります。
つまり、
表意者が錯誤を知っていたとしても
同じような意思表示をしたと考えられる場合は
表意者を保護する必要がなく
錯誤無効を認める必要はないのです。





客観的重要性が要求される理由は、
取引保護にあります。
表意者さえその錯誤を重要と考えるなら
錯誤無効が認められることになると
取引の安全が著しく害されてしまいます。
なので、
「錯誤を知っていれば
そのような意思表示をしないことが
取引の通念に照らして正当と認められること」
という客観的重要性が要求されるのです。




参考 「部会資料27」36貢〜
http://www.moj.go.jp/content/000077664.pdf




坂本龍治