28 民法改正・基本の「ほ」 〜錯誤 第95条(1) 動機の錯誤に関する判例法理の明文化〜

28 錯誤 第95条(1) 
  動機の錯誤に関する判例法理の明文化







錯誤をめぐる紛争の多くは
動機の錯誤が問題となるものであるにもかかわらず、
動機の錯誤に関する現在の規律は
条文上分かりにくい




(というか、動機は意思表示の要素ではないから、
判例・通説によると、
動機の錯誤は95条の「錯誤」に当たらない。)




ことから、
判例法理を踏まえて
動機の錯誤に関する明文の規定を設ける方向で
議論が進められています。




この点、
動機の錯誤が95条の「錯誤」に当たらないと解釈
することにつき、法務省参与内田貴先生は
次のように表現しています。




「これは驚きです。
 条文にはそんなことは一言も書かれていないからです。」




条文があまりにも不親切である、ということです。




ただし、
現在の反省を踏まえ規定を設けるとして
どのように規定するかは
喧々諤々の議論がなされており、
まだ定まっていません。





すなわち判例は、
動機が表示されて法律行為の内容になっている場合には、
例外的に動機の錯誤にも
民法第95条が適用されるとしていますが、





この判例法理をどのように理解するか?
について考え方が分かれてしまっているのです。
(動機の表示が重要と考える理解と、
 法律行為の内容になっていることが重要と考える理解とが
 対立しています。)





参考 「部会資料27」32貢〜
http://www.moj.go.jp/content/000077664.pdf
民法改正‐契約のルールが百年ぶりに変わる‐」99貢
内田貴著 ちくま新書 2011年10月10日第一刷発行




坂本龍治