平成26年司法書士試験を終えて〜記述式を中心に〜

平成26年司法書士試験を終えて〜記述式を中心に〜


本試験、お疲れさまでした。
今年も暑かったですね。
試験を終えて、クッタクタになった事でしょう。
簡単にですが、現時点における書式問題に対する
私の感想をコメントさせて頂きます。
以下のコメントは、あくまでも私個人のものですので、
オフィシャルな解答は伊藤塾分析会を待って下さい。
http://www.itojuku.co.jp/shihoshoshi/topics/chujokyu/index.html





まず、不動産登記に関しては。
「今年も実務チックだなぁ。」
というのが第一印象。
平成20年度の別紙ショック以来、
実務で実際に起きそうな事柄が問題の軸になっている気がします。
今年の軸は、
いわゆる「任売」(任意売却の略ですね。)。


借り入れた金銭の返済を滞納すると、
担保となっている不動産が競売にかけられてしまうわけですが、
競売となると手続は面倒だ、時間はかかる、相場よりも安くしか売れない、
といったデメリットが生ずるため、
債権者などの関係者を巻き込んだうえで、
裁判所外で不動産を売却する、といったことが良く行われます。
それが任意売却。
住宅ローンを滞納してしまい泣く泣く任意売却をする、
というケースが多い(本当に決済現場で泣いてしまう方もいます。)ですが、
この本試験問題だと、事業のために負担した債務の返済が滞ったようですね。


それから、いわゆる「名変」。
名変が出来るようになったら一人前、と言われるほど、
名変は奥が深く、意外にも難しいものです。
結論を言えば、Bの住所変更はトラップ。
住所変更の登記を入れる必要はありません。
“必要はない”という話ですから、実際に申請した場合、
これが却下の対象とはなりません。
しかし、問題文中に「申請件数が…最も少なくなるように」とありますから、
これを入れてしまうと減点は免れないでしょう。


根抵当権・抵当権に関しては、
売買による移転登記の前提として、
これを抹消しなければなりませんが、
根抵当権では前提登記の問題を緻密に検討する必要がありました。
すなわち、弁済による抹消の前提としての根抵当権元本確定。
元本確定登記を申請する前提としての名称、住所変更。
元本確定は、その日付にも注意ですね。
(確定日は15日?それとも23日?)


抵当権に関しては、信託登記の抹消をどう処理するか。
結論は、同時、かつ一の申請情報による申請となります。


参考 不動産登記令5条3項  法第百四条第一項 の規定による信託の登記の抹消の申請と信託財産に属する不動産に関する権利の移転の登記若しくは変更の登記又は当該権利の登記の抹消の申請とは、一の申請情報によってしなければならない。


そして、移転登記。
ここで集中力を途切らせないでほしかった。
A株式会社とBの持分全部移転による一申請情報申請による処理をしてよいだろうか?
登記記録上、A持分のみ差押えが入っている状態で、
「事務処理の都合上」差押え登記の抹消は5日付けとなる…
4日の申請時点では、形式審査上、
A持分のみ差押えが入っていることを前提とせざるを得ないでしょう。


恐らくは信託の処理、事業用定期借地で失敗していても、
致命傷にはならないはずです。
不動産登記に関しては、
根抵当権と移転の処理。
ここが勝負の分かれ目なのではないかと。そう思います。
難易度は高かったと思います。







商業登記。
不動産登記に比べると、随分あっさりとした印象。
問題柱書きから、「株式会社」の他に「合同会社」と出てくるものの、
「これはもしや組織変更??」
と予想した時点で、ニヤリした人もいたかと思います。
記述式答案構成力養成答練(商業登記法)第3回でばっちりと学習した問題。


しかも、代表社員に法人が混じっているから、
職務執行者の登記もしなければならない、
といった細かな点まで共通しているじゃぁないですか。


平成18年から新たに導入された組織形態。
定款の自由度が高すぎて、活用法がいまいち分からず
見慣れた株式会社形態が依然多く採用されてきましたが、
ようやく実務ノウハウが蓄積され、
身の丈にあった会社形態を積極的に採用しよう!
ということで、ここ最近ちょっとした注目を浴びています。


ただし、いきなり試験で出されても、
初見の受験生はかなり厳しい状況に置かれたかと思います。


そうはいっても、問題前半が怖いくらい基本的なこともあって
商業登記が全崩壊した、という事には恐らくならなかったでしょう。
連鎖論点となる代表権付与、税金計算含め、
前半部分を丁寧に処理出来ていれば、後半がふるわなくとも
守りの答案にはなるはずです。


全体の難易度としては、例年通り。
というのが私の感想。








繰り返しますが、以上は
現時点における
私個人の
感想ですので、
しっかりとした解答は伊藤塾分析会で確認してくださいね。







とにかく、
クッタクタになるまで戦い抜いたこころ、そして身体を、
是非いたわって下さい。
誰にも未来はあり、
どの道を進むにもエネルギーが必要です。


今の状態(あるいはもっと悪い状態)で
未来は切り開けませんから、
しっかりと休息してください。


本当にお疲れさまでした!!



坂本龍治