札幌  花火  キース・ジャレット


札幌  花火  キース・ジャレット



東京へ向かう飛行機の、
出発を待って目を閉じる。




気がつけばすでに空の上。




一日がかりの札幌での講義を終えて、
心地よい疲れの中眠りに落ちた。








キースジャレットというピアニストが大好きで、
何度か生の演奏を見に行った事がある。




即興演奏を得意とするピアニストで、
一夜限りの名曲が、次々と生まれては消えていく。




それはまるで花火のようで、
その空間にいる者だけが味わうことの出来る芸術。





CDに焼かれたコンサートの演奏も、
もちろん素晴らしいけれど、
生で無ければ味わえないものがそこにはある。





大げさに言えば、
私はそんな講義がしたいと思っている。




花火のような、
その空間に居てこそ味わえる、
元気の出る講義が出来れば良いと、思っている。





実際には、
まだまだまだ。





それでも今日は、
『今年皆さんが合格した時、
 本試験四カ月半前に坂本の話が聴けたのが良かったな。
 そう思ってもらえる講義をします。』とはじめて、




講義終了後には、
「今日、話が聴けて良かったです。」と
言って下さった方がひとりでなかった事は、
この上ない喜び。




打ち上げ花火にはまだまだなってはいないけど、
手持ち花火くらいにはなれてるのかな?
なんて事を思ってみる。











時刻は10時15分。
ふと窓をみれば東京の夜景。
『帰ってきた』と安堵すると同時に、
『この光の数ほど人が居るのか』と思うと驚かされる。




この先どれ程の人と出会えるか。
ひとつひとつの出会いを大事にしよう。
ひとつひとつの講義を大事にしよう。







坂本龍治