13 民法改正・基本の「ほ」 〜わかり易さの追求・平成16年改正〜

わかり易さの追求・平成16年改正





「文章が理解しやすい」





という意味での
分かり易さの追求は、
実は平成16年の現代語化改正により、
相当程度実現しているのではないかと思います。






平成16年改正が行われるまで、
民法

カタカナ・文語体表記
の、




句点「。」なし!




読点「、」なし!




濁点「゛」なし!




見出しなし!




項番号なし!




という、読み手にとっては非常に
親しみにくいものでした。





たとえばこんなです。







第九十六条 詐欺又ハ強迫ニ因ル意思表示ハ之ヲ取消スコトヲ得
或人ニ対スル意思表示ニ付キ第三者カ詐欺ヲ行ヒタ
ル場合ニ於テハ相手方カ其事実ヲ知リタルトキニ限
リ其意思表示ヲ取消スコトヲ得
詐欺ニ因ル意思表示ノ取消ハ之ヲ以テ善意ノ第三者
ニ対抗スルコトヲ得ス












それが今では、






(詐欺又は強迫)






なんて「見出し」を
付けてくれた上で条文が始まり、







第九十六条  詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2  相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った
場合においては、相手方がその事実を知っていたときに
限り、その意思表示を取り消すことができる。
3  前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、
善意の第三者に対抗することができない。










のように、
「句点」「読点」「濁点」「項番号」を
付けてくれ、
日本語としての読みやすさは
飛躍的に向上しています。





また、
この改正においては、




「或人」を「相手方」




と置き換えているように、




現代では一般に用いられていない用語の
適当な用語への置き換えもなされており、




読み手である国民への配慮が
なされていることが分かります。







平成16年の現代語化改正により、
「文章が理解しやすい」という意味での
分かり易さは、相当程度実現したといえます。





ただ、
こうした読み手への配慮は、
何もここ数年で高まった話ではなく、




1946年(昭和21年)に
戦争に負けた日本が
新しい憲法の原案を公表した時点から
始まっているようです。




(「法令読解ノート」53貢  
畠中信夫著 社団法人全国労働基準関係団体連合会 2011年2月1日発行)






でも、
明治29年に誕生した民法は、
時代に取り残されていたってわけです。





ただし、
戦争に負けて、
新しい憲法が誕生するにあたり、





民法
第4編・第5編
「親族」「相続」については、
全面改正されていますから、





第4編・第5編は
16年改正に先だって現代語化
されていました。





が、
それでも「見出し」や「項番号」は
付いてはいませんでした。





坂本龍治