「会社法の一部を改正する法律」は今年の試験に出るか
昨年の11月29日に臨時国会(第185回国会)に提出され、
今年の通常国会(第186回国会)で審議が継続している
「会社法の一部を改正する法律案」ですが、
司法書士試験との関係でいえば、今年の試験には影響しません。
平成22年2月24日に、千葉景子法務大臣から諮問が出されてから丸4年。
震災、政権交代、金融機関の融資問題…
色いろな事が起こり、延び延びになっているわけですが、
改正法附則により、改正法の施行時期は
公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日
とされていますから、成立即施行ということは考え難く、
早くとも試験に影響するのは来年から、と考えられます。
どのような趣旨で、どのような一部改正が検討されているのかについては、
法案提出の理由をみてみましょう。↓
株式会社をめぐる最近の社会経済情勢に鑑み、
社外取締役等による株式会社の経営に対する監査等の強化
並びに株式会社及びその属する企業集団の運営の一層の適正化等を図るため、
監査等委員会設置会社制度を創設するとともに、
社外取締役等の要件等を改めるほか、
株式会社の完全親会社の株主による代表訴訟の制度の創設、
株主による組織再編等の差止請求制度の拡充等の措置を講ずる必要がある。
これが、この法律案を提出する理由である。
(法務省HPよりhttp://www.moj.go.jp/content/000116475.pdf)
社外取締役・社外監査役の要件変更、
監査等委員会設置会社という新しい機関設計の創設など、
内容的には、大会社に影響することが殆どです。
ただし、
逆に中小企業において大きく影響する内容も含まれています。
たとえば
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する定めを設けている会社は、
これを登記しなければならなくなります。
会計限定の定めを設ける中小企業は非常に多いと思われますので、
登記において注意が必要です。
もちろんこれに携わる司法書士、
そして試験を受ける受験生においても同じです。
ただし、
改正法の施行時に監査の範囲を会計に限定する旨の定款規定を設けている会社は、
最初に監査役の就任又は退任が生ずるときまで
登記を要しないとする予定ですので(改正法案附則22条2項)、
会社法施行時に実務がパンクする、ということはなさそうです。
その他、
会社法施行後、大きな問題となっていた
詐害的な会社分割につき、債権者を保護する手立てが整備されたり、
募集株式の発行において仮装払込みがなされた際、
引受人や取締役に払込金額の全額の支払義務を負わせたり、
発行可能株式総数に関する4倍ルールが厳格化されたり
(株式併合を行う際には、発行可能株式総数も決議事項として決議し、
併合後の株式数が発行可能株式総数の4分の1を下回らないように
しなければならなくなる。)
すべての会社において影響する内容も多数含まれています。
多数代表訴訟制度や、
監査等委員会設置会社といった、
新しい内容も含まれているのですが…
受験生はひとまず試験を終えた夏に勉強することにしましょう。
坂本龍治